介護での特定技能人材の日本語能力について
介護業で特定技能人材の採用を考えている担当者様にとって、外国人の日本語能力は気になるもの。採用しても円滑なコミュニケーションが取れなければ、仕事に支障をきたしてしまいます。本記事では、特定技能1号を取得するための日本語能力の目安と実際のレベル感、介護業界特有の「介護日本語評価試験」について解説します。すべて読めば、特定技能人材の日本語力はどの程度なのか、採用しても大丈夫なのかイメージできるでしょう。
特定技能1号の在留資格を取得するための日本語能力の条件は?
特定技能1号の在留資格を得るには、日本語能力と技能が一定以上ある必要があります。日本語能力を測る手段として、日本語能力試験(JLPT)と国際交流基金日本語基礎テストがあります。
日本語能力の要件を満たすには、日本語能力試験(N4以上)もしくは、国際交流基金日本語基礎テストの試験に合格する必要があります。なお、技能実習2号を良好に修了した人は、日本語能力を測る試験を免除されます。下記ではそれぞれの試験について詳しく見ていきましょう。
日本語能力試験N4の合格が必須
特定技能1号の在留資格を得る要件の1つとして、日本語能力試験があります。日本語能力試験とは、国際交流基金と日本国際教育支援協会の2つが主催し、日本語を母国語としない人の日本語能力を測る試験です。レベル別にN1からN5があります。
特定技能1号の在留資格を得るためにはN4の合格が必須です。
では実際にN1からN5のレベル感はどのようなものでしょうか。N5が一番簡単で、N1が一番難しくなります。
階級 | レベル |
N1 | 幅広い場面で使われる日本語を理解することができる ・幅広い話題について書かれた新聞の論説、評論など、論理的にやや複雑な文章や抽象度の高い文章などを読んで、文章の構成や内容を理解することができる。 ・さまざまな話題の内容に深みのある読み物を読んで、話の流れや詳細な表現意図を理解することができる。 ・幅広い場面において自然なスピードの、まとまりのある会話やニュース、講義を聞いて、話の流れや内容、登場人物の関係や内容の論理構成などを詳細に理解したり、要旨を把握したりすることができる。 |
N2 | 日常的な場面で使われる日本語の理解に加え、より幅広い場面で使われる日本語をある程度理解することができる ・幅広い話題について書かれた新聞や雑誌の記事・解説、平易な評論など、論旨が明快な文章を読んで文章の内容を理解することができる。 ・一般的な話題に関する読み物を読んで、話の流れや表現意図を理解することができる。 ・日常的な場面に加えて幅広い場面で、自然に近いスピードの、まとまりのある会話やニュースを聞いて、話の流れや内容、登場人物の関係を理解したり、要旨を把握したりすることができる。 |
N3 | 日常的な場面で使われる日本語をある程度理解することができる ・日常的な話題について書かれた具体的な内容を表す文章を、読んで理解することができる。 ・新聞の見出しなどから情報の概要をつかむことができる。 ・日常的な場面で目にする難易度がやや高い文章は、言い換え表現が与えられれば、要旨を理解することができる。 ・日常的な場面で、やや自然に近いスピードのまとまりのある会話を聞いて、話の具体的な内容を登場人物の関係などとあわせてほぼ理解できる。 |
N4 | 基本的な日本語を理解することができる ・基本的な語彙や漢字を使って書かれた日常生活の中でも身近な話題の文章を、読んで理解することができる。 ・日常的な場面で、ややゆっくりと話される会話であれば、内容がほぼ理解できる。 |
N5 | 基本的な日本語をある程度理解することができる ・ひらがなやカタカナ、日常生活で用いられる基本的な漢字で書かれた定型的な語句や文、文章を読んで理解することができる。 ・教室や、身の回りなど、日常生活の中でもよく出会う場面で、ゆっくり話される短い会話であれば、必要な情報を聞き取ることができる。 |
以上の表のように、N1の日本語レベルが一番高いです。特定技能1号の在留資格取得にはN4の合格が必須になります。
国際交流基金日本語基礎テストの合格が必須
国際交流基金日本語基礎テストとは、主に就労するために来日する外国人に対し、日本で生活・就労する際に必要な日本語能力を測定する目的があり、「ある程度日常会話ができる・生活に支障がない」といったレベルにあるかどうか確認する試験になります。
この試験は日本語を母国語としない外国人が対象となり、その中でも就労を目的に来日する外国人を対象にしていることが特徴です。特定技能1号を得るための試験としても利用されています。
国際交流基金日本語基礎テストは、日本語能力試験のように複数の受験レベルがありません。その代わり、1度の受験でどの程度の日本語レベルにあるのかを測る指標があります。
国際交流基金日本語基礎テストでは、「A1・A2・B1・B2・C1・C2」のレベルがあり、Aが簡単でCが高レベルとなります。特定技能1号を取得するにはA2レベルが必要とされており、「基本的な個人情報や家族情報など直接関係のある内容について理解できる・日常会話であれば、ある程度コミュニケーションが取れる」などが基準とされています。
技能実習2号を良好に修了すれば特定技能の試験免除
技能実習制度とは、日本で技能の実習や研修を行うための在留資格で、入国年数に応じて技能実習1号から3号まであります。
技能実習1号は入国1年目を指し、技能実習2号は2・3年目を指します。特定技能に関しても技能実習制度が関わっており、技能実習1号の1年と技能実習2号の2年間の計3年の経験があれば、特定技能の技能試験と日本語試験が免除されることになっています。つまり特定技能に切り替えることができるのです。
技能試験と日本語試験を免除される者として、技能実習2号の修了者に加え、介護福祉士養成施設を修了した者、EPA介護福祉士候補者としての在留期間満了(4年)した者の3つがあります。
試験に合格した外国人は実際にどのくらい日本語が話せる?
実際の日本語能力試験N4・国際交流基金日本語基礎テストの問題を見てみましょう。
日本語能力試験N4のレベル
引用:日本語能力試験N4問題例
上記の問題は、日本語能力試験N4で出題される「言語知識(文字・語彙)1」の問題です。漢字の読み問題で、特にひねった出題でもないため、知っていれば解けるレベルの問題といえるでしょう。
国際交流基金日本語基礎テストのレベル
続いてこちらは、国際交流基金日本語基礎テストの内容。問題文は英語で、イラストの女性を見てどのような表情をしているのか答える問題です。こちらもひねった選択肢はないため、知っていれば解ける問題となります。
介護職の場合は介護日本語評価試験にも合格が必要!
特定技能人材として介護職で就労する場合、日本語能力を測る試験に加えて介護日本語評価試験の合格も必要です。
介護日本語評価試験は、介護業務を行うにあたり支障がない程度の日本語能力を有しているのか確かめる試験で、介護用語などについても出題されます。
特定技能人材はあくまで「即戦力」。介護業務を行うための基礎的な会話ができなければ仕事に支障をきたしてしまいます。そうした水準に達しているか確かめるための試験といえるでしょう。
出題数や試験時間、試験科目は下記の通り。
全15問 30分 ・介護のことば(5問) ・介護の会話・声かけ(5問) ・介護の文書(5問) |
介護日本語評価試験は、問題数自体は少なめといえるでしょう。
実際に出題されるサンプル問題がこちらになります。(►介護日本語評価試験)
なお、介護技能評価試験や介護日本語評価試験に対応する学習用テキストを厚生労働省が作成しています。下記のリンクから参考にしてください。
<介護の特定技能評価試験学習用テキスト>
▶日本語版
▶英語版
▶中国語版
▶タイ語版
介護現場での日本語能力として最低N3は欲しい
一般的な特定技能人材は、N4レベルの日本語があれば大丈夫とされています。しかし介護業界に関しては、コミュニケーションが非常に重要な仕事であり、高齢者によっては発音がはっきりしないなどの理由で聞き取りにくいこともしばしば。そのためできるだけ高いレベルの日本語能力を有している方が良いでしょう。
以前は「技能実習2号の間にN3を取得するのが義務」だったのですが、今は「技能実習2号の間にN3を取得するのが望ましい」となっています。
つまり、技能実習2号の間にN3を取ることが推奨されており、技能実習2号の人は特定技能の日本語試験を免除されることから考えても、N4よりもN3レベルの能力があったほうが良いと言えるでしょう。
「エタンセル」では、外国人材の日本語教育に力を入れています。現地の日本語教育機関とも連携しているため、学習がスムーズに行えます。